【特別企画】台南料理 味の芸術 歴史がはぐくんだ美食

かつて「ウォール・ストリート・ジャーナル」をして「世界の美食博物館(veritable food museum)」と言わしめた古都「台南」。17世紀のオランダ統治から明代、鄭成功時代、清代を経て今に至るまで、台南の食文化はその多様性を広げてきました。台南は政治経済だけでなく、食の歴史を考えるうえでも重要な土地です。

当地を代表する「府城食府」の蔡国安シェフは、台南料理の特色として☆甘みを重んじる味付け(偏甜口味)☆自身で調味料を付ける食べ方(沾醬)☆バーソー(肉燥、細切れ豚肉を甘辛く煮込んだもの)―の三点を挙げます。四百年前から台南は砂糖の生産地・輸出地として知られ、サトウキビから作られた砂糖は当時豊かさの象徴でした。このため台南人は食事に砂糖を使うようになり、甘みを重んじる味付けが広がるとともに、食材のよさが「沾醬」という習慣を生みました。貴重なタンパク源だった豚は、徹底的に使いつくすことが求められたことから切れ端を利用したバーソーが生まれたといわれ、今でも台南の食卓に欠くべからざるものとなっています。

台南料理といえば、「小吃」がよく知られていますが、「官菜」または「酒家菜」と呼ばれる高級料理も評価が高いです。高官や政商をもてなすためのものです。往時は、味にうるさい金持ちたちを納得させるため、中国の福州や汕頭(スワトウ)、広東などから渡ってきた料理人たちが精緻を凝らした宴席料理を産みました。

台南料理にはそうした歴史が眠っています。